ロシアの狙撃兵の少女のお話。本屋大賞をとっているので話題になっていましたね。
何故、年端もいかない少女が狙撃兵として人を殺すことができたのか。普通の精神では壊れてしまうはずだ→小さいころから訓練されて人間らしい感情をなくし、兵器として育てられてるに違いない、なんと痛ましいことか。そんなひどいことをするなんてロシアはなんて国だ。
そう思われましたか?
感情をなくし兵器として育てられているから簡単に人を撃てる。そんなのはアニメの世界の話だよな、とこの本を読んで思いました。
主人公の少女も含め、登場する狙撃兵たちはみなそれぞれに戦う理由もあり動機もある。感情もあるし、その年ごろなりの感覚、感情を持ち、同志たちに対して友情も感じている。
少女たちは訓練に耐え、乗り越えられた選ばれしものだけが戦地に赴きます。
敵に対面して少女たちは何を思うのか、いつか戦争が終わったとき、女性が戦士として戦うということはどういうことか、戦地で、または戦地から帰還したときに女性たちはどのような扱いを受けるのか。
どこにでもいる、戦争がなければ自分の生まれた村で幸せに暮らしていたかもしれない一人の少女の視点からみられる世界。それを垣間見る経験ができる本です。
「戦争がなければ違った人生があったのに」
月並みな言いぐさですが、主人公セラフィマの視点を通して戦争を見ることで、より深く考えてしまいます。
戦争はなぜしてはいけないのか。
「いけないから。残酷だから。だめだから」
それで終わってしまうのではなく、自分でかみ砕いて言語化していくことが今必要だと私は感じています。
故郷の村で仲間たちと助け合いながら農業をしたり狩りをしたり、そうやって老いていく。
または故郷の村にとどまることをやめて都会に出ていく
どちらが本人にとって幸福であるか、どのような結果になるのかは人生が終わるまでわかりません。でもそれは自分で選択し自分で納得して生きていく以上、誰のものでもない自分の大切な人生です。
でも、それまでの生活や希望や文脈を、時には人格を蹂躙して人生をめちゃくちゃにしていくのが戦争です。自分の意志と思い込まされて、戦いに参加し、殺し合いをする。
そのステージに上がってしまって「これは自分の意志でやっているんだ」と話す兵士たちの人生は、いったい誰のものなのか。自由とは…意志とは…希望とは…未来とは…
ことあるごとにこのことを私は考えるでしょう。今までも考えてきましたが、この本がそこに新たな視点を与えてくれました。
エンタメ本としてもとても面白いよ、という話
このように、戦争について考える本といわれると正直思いし、手に取りづらいなと感じてしまうこともあるかもしれません。でも、ご心配なく。
ドキドキ、ときにわくわくしながら読めます。少女たちの友情の物語、または教官イリーナとの子弟モノ、少年漫画のようなバトルもの、戦闘についての解像度を上げる知識本、史実と照らし合わせて楽しむ歴史本、としてもそれぞれ楽しめると思います。
私は「どのような状況に置かれても不変的な、人間の心」みたいなところに興味があるので、この本は少女たちの成長と友情と青春の物語として読みました。
関連する積読本
『戦争は女の顔をしていない』という本があります。
まだ読んでいないのですが。
『同志少女よ、敵を撃て』は間違いなくこの本からも着想を得ています。兵士として戦争に参加した女性へのインタビュー本です。
武器や軍事の知識も満載
銃ついての描写が非常に丁寧です。それぞれの銃の役割や使い勝手や長所と短所など。あと、狙撃や軍事作戦に関しても。武器マニア、軍事マニアの方にも刺さる可能性があります。私はその辺の知識がゼロなのでさっと流して読んでいましたが…
動機を階層化する、その意味を自分に置き換えて考えてみる
物語に出てくる女性教官、自身も有能な狙撃兵だったイリーナのセリフで強い印象を受けた個所があります。
『動機を階層化しろ』
少女たちはそれぞれに動機を持っている
家族や仲間をドイツ兵に殺された
自分の出自の民族の地位向上のために戦いたい
すべての子供を守りたい
どん底にいるときに助けてくれた人へ恩を返したい
それは大事なものなので胸に刻んでおくとして、ではその動機を持ったうえでどうするのか。
この戦いに勝って生き延びたい→一人でもたくさんの敵を葬る→今狙った敵を確実に撃つ
「今、ここで何をすべきか」という階層の一番浅いところにある動機のために、神経を研ぎ澄ませ、集中する。そのために訓練がある。
この、動機の階層化をしたほうが良い、というのはいつどんな時にでも大事なことだと思う。それが戦争に利用されると「敵を殺す」になってしまうのだけど。この教えは今の自分にも染みるなあ、と思っている。
今、ブログとかそのほかいろいろ挑戦してることがあって、それは究極、「副業で稼ぎたいなぁ」と思っている。でも、お金を得るためには様々やらなきゃいけないことや乗り越えなければいけないことがたくさんあって。
広告収入をもらえるぐらいたくさんの人に見てもらいたい→いいコンテンツをたくさん作りたい→自分が面白いと思うことに対してアンテナを張っていたい→いい記事を書きたい→この記事を読んだ人にとって意味のあるものにしたい→一行一行を誠意をもって丁寧に書きたい。
だから、私はこれを今書いています。いつかだれか、自分の知らない誰かに面白いと思ってもらえることを考えながら。
ではまた。
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