お金とか生活とか節約とかに関する本のレビューを書いていこうと思っていたけど、2冊目からさっそくテーマとあまり関係ない本の紹介です。
最近読んで、面白かったから…ただそれだけなんですけど…
ネタバレは特にないと思いますが、これから読むので何の情報も知りたくない!という人はスルーしてください。
私はこの本に関して理路整然と感想を述べる技術がないので、感じたことをありのまま書きますね。
裏表紙の説明をみた時思ったこと「あ、この主人公、軽い知的障害か境界知能の人っぽいな」
それがまず読む前に考えたこと。
仕事で障害のある方への支援をしているせいかそういうアンテナを無意識に張っているのか、街を歩いているときとか、駅で、とか「あ、あの人障害者の人だ」と反応することがあります。
それ自体はいいとか悪いとかでもないのですが、文学やフィクションを楽しむ上ではちょっと悪い癖だなと思っていて。
それは、その登場人物を「支援ベース」で考えてしまうところ。
この人はこういう障害があるっぽいからこういうサポートがあったらもっと生きやすくなるかも。
ということが先に立つと、その人の本質の面白み、個性に目がいかなくなってしまう。
個性って、いびつさ、ゆがみ、アンバランスさ、そういうものを含めたものであって、完璧な円じゃなくて凸凹しているから面白いし、魅力的なのだと思う。
だから支援がどうとかいうのを抜きにして人間を見てその人の魅力を感じるって、文学などの作品を楽しむときには必要で、というか、支援の仕事をしていたってそれは必要な感性だと改めて思いました。
この本の登場人物たちは、生きづらさを感じていながらも個性的で豊かで魅力的だ。
肉子ちゃんは男を見る目がなく、何度も騙されひどい目にあい借金を肩代わりさせられたりしてきた。
肉子ちゃんの家庭や、成長過程でぶち当たる問題に対して、適切なサポートがあれば、そんな目には合わなかったのかもしれない。
肉子ちゃんを支援ベースで見つめると「支援対象者」なのかもしれない。
でも、行政や福祉の手が入っていたらこの物語は生まれていない、というパラドクス。
私たちが生きる世界はそんなに理路整然としていない。行政や福祉は万能じゃない。
苦しみながら泣きながら、なんとか生きる道を探して生きている人たちがいる。
周りに迷惑をかけたりかけられたりしながら。
こう生きていけば幸せ、という唯一の正解なんて存在しない。歪んでいたり、綺麗じゃなかったり、ごちゃごちゃしていたりするから面白いんだ。
そういう「どこにでもいる人々の暮らし」を主人公(肉子ちゃんの娘)の目を通してスケッチしたみたいな物語です。
西加奈子さんの作品は、そういう人生の複雑さ、を見せてくれるなあと思う。
余談です。
友人から荷物が送られてきた中に「借りてた本返す!ありがとう!」というメッセージとともにこの本が送られてきました。
「あれ?貸してたっけ…」
貸した記憶がないというか、今まさに読んでる途中じゃないか。
私はkindleで読んでるので物理の本は買ってないはず…あら?
友人は、私が読んでそうな本だったからてっきり私から借りたと思い込んでたのだそう。
私が読んでそうっていうのは確かにそうで、だって今読んでるぐらいだから。
誰の本なのかわからないままとりあえず私が預かっております。
そんなわけでkindleで読み終わった本の紙バージョンがうちにある状態ですが、私はこの開いたことのない本を「読んだ」といえるのだろうか。書いてある文字はすべて一緒なので内容は知ってる。でもなんか、「この本を読んだ」というのとは感覚的に違う気がする。本って、どういう状態で読んだか、読んだ媒体、買ったのか借りたのか、によって違った体験になると思っている。だから同じ本も電子書籍で読んだのと紙の本で読んだのでは体験としては違うものだと思う、というのが私の持論です。まあ、知らんけど。
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